LMC代々木196 決勝: 彌永淳也 vs 鈴木大輝

彌永 淳也(東京)。
古豪でもあり、若手でもある。なんと比喩して良いのか、プレミアイベントでフィーチャーエリアへ招く度に、うまい表現が見つからずにさらりと紹介してしまっている……ことが続いていたので、そろそろいいキャッチフレーズを捻り出したいと、筆者が小さな胸を痛めているのはまた別の話。「二つ名」に関しては天才的なライターがいたので、その方に丸投げということで、この話題はひとまずしまっておこう。
今日、裏番組では PTQ 京都も行われているのだが、彌永はすでに権利持ち。と、いうことは、当然本戦へ向けてスタンダードの調整ですよね? そんなわけで、彌永が久々に LMC へとやってきた。デッキは「王者のデッキ」“フェアリー”。「魔王」三原 槙仁(千葉)をスイスラウンドで退けるなど、盤石で駒を進めてきた。
鈴木 大輝(千葉)は、千葉の新星である。年齢的には彌永とほぼ同世代なのだが、ここでは挑戦者の立場となる。しかし、LMC で活躍した千葉のプレイヤーは、その後の GP などのプレミアイベントで「メジャーデビュー」するのは、昨年の千葉コミュニティの活躍ぶりから記憶に新しいところだろう。
デッキは、勢いで戦う“親和エルフ”。デッキの動きそのままに、決勝ラウンドでも圧倒的なパフォーマンスで勝ち上がってきた。競馬では、夏場に勝ち名乗りを上げて、秋から冬にかけての大レースへの出走権を得て、大きな勲章を掴む競走馬を「上がり馬」という。つまり、鈴木は今年の千葉コミュニティ的に「上がり馬」となれるのかどうかという試金石になるのがこの決勝だ。
これらの見どころを踏まえた上で、本稿と動画と両面で決勝を楽しんでみて欲しい。
Game 1
先攻は鈴木。《ラノワールのエルフ》から立ち上がるものの、彌永の《思考囲い》でスペルが《エルフの幻想家》《エルフの行列》の 2 枚だけというハンドがあらわに。
彌永はこの中から《エルフの幻想家》を取り除き、ブーストエンジンから確実な処理を始める。ところが鈴木がこの後に繰り出す手が《レンの地の克服者》《贖われし者、ライズ》と、彌永にとって未公開な情報のオンパレード。《変わり谷》の助力も相まって、《エルフの行列》から早々とトークンの群れが立ち並んだ。
彌永も《苦悶のねじれ》から《苦花》へとフェアリーのお手本通りの展開を見せ、《贖われし者、ライズ》には、彌永も負けずにトップデッキの《コショウ煙》をお見舞い。あとは時間との勝負といった状態には持ち込むが、鈴木が次々と見せるトップデッキは、2 枚目の《レンの地の克服者》、そして《傲慢な完全者》。
彌永は《呪文づまりのスプライト》で《傲慢な完全者》をカウンターするが、さらに《茨森の模範》が登場。一気の攻勢を見せる鈴木に、彌永は《苦悶のねじれ》を駆使してダメージを最小限に留め、クリーチャー戦闘でアドバンテージを積み重ねる。
ついに、鈴木の歩みが止まる。
このタイミングを彌永が見逃すはずがない。《霧縛りの徒党》を戦闘中に、アップキープにと自在に呼び出し、反撃に転じてわずか 2 ターンで勝利を手にした。
彌永 1-0 鈴木
Game 2
鈴木 「《苦悶のねじれ》がホントきつい~」
と、文字通り苦悶の表情を浮かべる鈴木。キープハンドはともかく、その後の展開自体はほぼ理想的だったところからの逆転負けだけに、予想以上にそのダメージは大きいか。
両者マリガンからのスタート。土地 1 枚ながら、これが“親和エルフ”の真骨頂とばかりに、《遺産のドルイド》から流れるように《三人組の狩り》とつなげてビートダウンを始め、さらに 2 枚目の《三人組の狩り》《萎れ葉のしもべ》と攻めに攻める。
彌永は土地が一瞬 2 枚で止まり、鈴木の攻撃を一度は受けるも、すぐに《苦花》から《蔓延》と命をつなぎ、残った《萎れ葉のしもべ》も《苦悶のねじれ》とフェアリー・トークンとで捌き切り、後続も《呪文づまりのスプライト》連打で完封。
鈴木の「親和タイム」が終了すると「霧縛りタイム」が始まるのは、第 1 ゲームと同じ。鈴木にできることは、ただただフェアリーの群れが自陣へと向かってくる情景だけだった。
彌永 2-0 鈴木
鈴木 「やっぱり《苦悶のねじれ》か……」
彌永 「さすがに1戦目のトップデッキ連打はびっくりしたけど、こっちもちゃんとスペル引けていたからね」
鈴木 「どのかーどが一番きつかったですかね?」
彌永 「《贖われし者、ライズ》が生き残ってたらまずかったかも。あそこの《コショウ煙》トップデッキで助かったかな」
鈴木 「デッキ名が“しったことか”で、《神の怒り》や《炎渦竜巻》を“しったことか”という意味だったのですが……《蔓延》も“しったことか”でしたから、やむ無しです」
鈴木が彌永に積極的に質問する形で感想戦を続ける両者。立場的には挑戦者だった鈴木だが、二戦ともおおいに見せ場は作った。足りない技術と経験は、チャンピオンシップが行われる秋までに埋めてみせる。鈴木のリベンジに期待しよう。
展開だけ見ると貫禄勝ちに映った彌永だったが、実のところはそうではなかった。と、いうのは先ほどの会話でご承知の通りだろう。確かに、スペルのタイミング、戦闘の応戦ではさすがのスキルを見せつけた彌永。しかし、動画だけでは伝わり切らなかった部分を、この記事で補完して頂ければ幸いだ。
2009 年、最初の代々木 LMC 優勝者は、彌永 淳也(東京)!
- 関連記事:LMC 代々木 196th 結果