戦前のメタゲーム ~高知発、ミラディン環境を追いかけろ!~
[2003/10/17]
ミラディン解禁。
それが意味する所は、マッドネス、サイカトグといったオデッセイブロックの影響が色濃く残るデッキの崩壊と、『明らかに茶色くなれ』といわんばかりのミラディンのカードプールによって、大幅なデッキデザインの変遷が余儀なくされた。
と、いう事でしょう。
そして、《金属モックス/Chrome Mox》によって大幅に上がった序盤の速度を武器に展開してくるウィニー系デッキ。
《嘘か真か/Fact or Fiction》《綿密な分析/Deep Analysis》の後継者としてスポイラーの時点から評価の高かった《知識の渇望/Thirst for Knowledge》を擁して構えるコントロールデッキ。
極めつけは、5 年前の冬を彷彿とさせる『茶色』いコンボデッキ……。
公認大会での『解禁』はもう少し先ですが、事実上の開幕戦とも言える高知最強位戦(LANCERのお部屋)の結果とメタゲームを参考に、決戦前夜のミラディン環境を占ってみたいと思います。
勝ち組のデッキ ~コントロール~
まずは勝ち組のデッキから洗っていきましょう。
実にベスト 8 に 4 名ものプレイヤーを送り込んだ“サイクリング”。それはブロック構築戦からの流れを汲んだデッキというよりも、環境がブロック構築のまま大きな変化を遂げていないという事が浮き彫りになっています。
どういう事かというと、足し算が引き算に追いついていないという事です。
つまりは、オデッセイブロックという引き算に対して、未だミラディンという足し算の等符号は成立していないという裏付けが見て取れます。
環境のスタートとしては当然の結果ともいえるのですが、去年の今頃……オンスロートブロックがスタンダードに加わった頃にはすでに“サイクリング”というデッキタイプは猛威を振るっていたわけで。
それを考えると、ミラディンが参戦した事による『環境の変化を語れるデッキ』の台頭とまでは行かず、現状のメタゲームの解析を進めた上で『オデッセイを引いた』勝率の高いデッキを構築する……。
それが GP 横浜を制した、いや、OnBC (オンスロートブロック構築)を制した“サイクリング”に白羽の矢が立った最大の要因なのでしょう。
あと理由付けとして考えられる要因として、ミラディン世界の未知のデッキに遭遇した際にも『なんとかなる』、受けの広いデッキであるという事も加えておきます。
Masahiko Morita - Champion / Go Anan Deck 2003 (白赤サイクリング) | |
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4 永遠のドラゴン/Eternal Dragon 3 賛美されし天使/Exalted Angel 2 トリスケリオン/Triskelion |
3 因果応報/Karma 1 滅殺の命令/Decree of Annihilation 4 赤の防御円/Circle of Protection: Red 2 象牙の仮面/Ivory Mask 1 アクローマの復讐/Akroma's Vengeance 1 正義の命令/Decree of Justice 2 拭い去り/Wipe Clean 1 抹消/Obliterate |
優勝デッキのレシピです。
ミラディンから加わったカードは《トリスケリオン/Triskelion》のみ。同じく環境に加わってから日の浅い第8版は多く採用されていますが、そのほとんどがサイドボードに収納され、このデッキはやはりオンスロートの産物な事実がうかがえます。
もともと基本セットはサイドボード向けのカードが多いので、今後も『第 8 版のカードを軸にした』というデッキは少し考えづらいですが、『ミラディンを軸にした』デッキが登場した際にもサイドボードでの活躍が期待出来るというものです。
では、同じコントロール系デッキとしてパーミッションはどうでしょうか?
Takashi Nishimori / 白青パーミッション | |
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3 賛美されし天使/Exalted Angel |
1 因果応報/Karma 2 供犠台の光/Altar's Light 2 象牙の仮面/Ivory Mask 1 未来予知/Future Sight 1 もみ消し/Stifle 3 無効/Annul 4 ボトルのノーム/Bottle Gnomes 1 賛美されし天使/Exalted Angel |
ベスト 8 に勝ち進んだ 2 つの青白のうち、オーソドックスな形のパーミッションをピックアップしてみました。
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《もみ消し/Stifle》がメイン投入されているのは、フェッチランドの起動や同キャラ系の《忘却石/Oblivion Stone》《正義の命令/Decree of Justice》を巡る攻防を有利に展開し、サイクリングの《滅殺の命令/Decree of Annihilation》を封じる事が目的と思われます。
また、《魔力の乱れ/Force Spike》を失った事でのマナ・カーブも意識したものだと思われます。
他の構成も過去の青白のパーツから失った物の代替品を積み込んだ印象ですが、問題点としては《知識の渇望/Thirst for Knowledge》を使用する上でのジレンマとして、《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman》が天敵であるということ。
今のところは緑系デッキが大人しいので大きな問題にはなっていませんが、この 1 マナ軽い《なだれ乗り/Avalanche Riders》が 4 枚投入されたメタデッキが戦場に姿を現すのはそう遠い日の話ではないでしょう。
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また、新たな《火薬樽/Powder Keg》である《選別の秤/Culling Scales》は青白の必須カードと考えていいでしょう。
ビートダウンデッキはもとより、サイドボード後に今後見かけるであろう《減衰のマトリックス/Damping Matrix》や《物語の円/Story Circle》《忘却石/Oblivion Stone》まで手が出せる優秀なカードだと考えます。
癖があるのは《火薬樽》と同じ。
しかし、融通が利くのは《選別の秤》であると思います。
やはりミラディンの特性を掴んだ構成に変化を遂げない事には、生き残りは容易ではないはずです。
もう一つ勝ち進んだ青白は、《変幻の杖/Proteus Staff》と《ゴブリンの放火砲/Goblin Charbelcher》を使ったコンボデッキ。こちらは『ミラディンを軸にしたデッキ』として活躍を見せています。
速攻系デッキの猛攻を耐える事、コントロールデッキの妨害を凌ぐ事という 2 つの命題を抱えてはいるものの、調整が今も全力で進められているこのデッキは、かつてのエクステンデッドで活躍した“Donate”や“The Draco”の後継者としての期待もされているわけで、そのポテンシャルは決して低くはないと考えています。
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改良ポイントとしては、
- パーミッションとして構築するならば、パーマネントコントロール呪文を増加する
- サイドボードへの《防御の光網/Defense Grid》の採用
- アーティファクト高速展開系に持って行くならば、メインかサイドに《機械の行進/March of the Machines》を投入して、別の勝ちパターンも構築すること
が、挙げられます。
ただし、《機械の行進》はアーティファクト・土地が全て壊れるので注意が必要です。
逆に言うと、パーミッション系デッキがあえてアーティファクト土地をデッキから切る事で、強力なサイドボードカードが誕生する事を意味します。
もちろん、これもメタ次第ですが。
速攻系デッキの場合 ~茶色い影響は??~
速攻系デッキの急先鋒は、やはり前環境。と、言ってもブロック構築に限らずスタンダード構築戦でも活躍した“ゴブリン”が挙げられるのは文句無しです。
ビートダウンか、はたまた《総帥の召集/Patriarch's Bidding》タイプかで分かれたようですが、《消えないこだま/Haunting Echoes》を失った環境下で強いのは“召集タイプ”であると思います。
しかしながら、問題が会場にゴブリンが多いのかサイクリングが多いのかによって戦績が安定しない点にあるのはブロック構築時と同じです。
もう一つ理由を加えるならば、ブロック構築には無い《神の怒り/Wrath of God》が、この世界には溢れているからです。
Yuji Noguchi / Out door ゴブリン (赤黒ゴブリン) | |
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3 つつき這い虫/Clickslither 4 包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander 4 ゴブリンの戦長/Goblin Warchief 2 ゴブリンの名手/Goblin Sharpshooter 2 火花鍛冶/Sparksmith 4 ゴブリンの群衆追い/Goblin Piledriver 3 スカークの探鉱者/Skirk Prospector 4 ゴブリンのそり乗り/Goblin Sledder |
2 沼/Swamp 3 紅蓮地獄/Pyroclasm 1 野火/Flashfires 4 宝石の手の焼却者/Gempalm Incinerator 2 ゴブリンの名手/Goblin Sharpshooter 3 総帥の召集/Patriarch's Bidding |
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速攻だけを考えるならば《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》を使ってのビートダウンも面白かったのですが、この全色対応の《怨恨/Rancor》は、ことゴブリンにおいては序盤の展開を遅らせるだけとなり、スロットには出来る限りの火力を投入するのが戦術となっているようです。
ましてや白ウィニーの台頭が叫ばれる中、《黄鉄の呪文爆弾/Pyrite Spellbomb》がメタカードとされている状況でクリーチャー数を減らしてまで投入することができないというのが現実かと。
また、元祖《怨恨》と違って《忘却石》に対しての耐性が無いのも課題です。
生物 1 体 1 体を強化して、ポンザレッドの様なコントロールを組もうにもこの手のデッキには必ずと言って良いほど《忘却石》が入るわけですから、逆シナジーもいいところです。
しかし《極楽鳥/Birds of Paradise》というマナ・ブーストを擁するステロイドや、飛行・畏怖を持つ青や黒はそれなりの働きを期待して良さそうですが、これらのデッキが環境で戦えるレベルかというと、まだ時間がかかりそうな印象です。
個人的な意見としては、マッドネスは失ったものの“青緑”という構成が装備品を生かすビートダウンの可能性を感じています。
The MIRRODIN?
『見せてもらおうか。ミラディンのアーティファクトの性能とやらを』
失礼(笑)。
冗談はさておき、ミラディンといえばアーティファクト。
当然その流れに沿ったデッキを組んでみたくなるのがデッキデザイナーの性でして。
果たして『MoMa にあらずんば人にあらず』とまで言われた茶色い冬はやってくるのでしょうか?
なにはともあれ、楽しい創造をしながら 2 日間のお祭りを楽しもうではありませんか。
Sample Deck / Talisman Blue - Designed by Yukio Kozakai | |
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4 無効/Annul 3 ブーメラン/Boomerang 3 防御の光網/Defense Grid 3 紅蓮地獄/Pyroclasm 2 機械の行進/March of the Machines |
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